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by reina917
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*仔猫発見13日目 別れの時*


午後の1時に私たちは出かけることになった。約束は午後3時。

支度はすっかりできているので、後はネコちゃんを車に連れて行くだけだ。
昨日、寝床として用意したカゴにネコちゃんを入れ、車に乗せた。
脱走したり、嫌がったりもしていない。
私たちの存在に慣れたせいだろうな、と思った。

車を走らせ途中、行きつけのペット用品のショップに寄った。
ネコちゃんを渡す時に使う、キャリーケースと、今まであげていたゴハンを
いくつか買った。キャリーケースは、ワンちゃん用のバックのような形をした
ソフトケースだ。ポケットがついているので、そこに今まであげてたゴハンを
3袋入れた。新しい飼い主にあげるためだ。

ふと、ネコちゃんの様子を見ると、かごの中で眠っていた。
今、起こすのもかわいそうだから、ネコちゃんをキャリーケースに入れるのは、
飼い主に渡す直前にしようと言う事になった。

新しい飼い主の自宅のそばまで、予定よりずっと早く着いてしまった。
静かな公園のそばに車を停めてネコちゃんをキャリーケースに移すことにした。
彼に抱っこされているネコちゃんは、おとなしく、真ん丸い目はボンヤリしてるように見えた。
キャリーケースに今まで、カゴにひいていたバスタオルをひいてそっと中に入れた。
私はキャリーケースをひざの上に乗せた。少しでもそばにいたかった。
キャリーケースは上部が薄いメッシュ素材の布なので中が見える。
ネコちゃんがトロンとした目で私を見上げていた。
お別れの時が近づいているのだ。

それから、飼い主となる方に電話をかけこれから伺うことを伝えた。
2、3分で目的地に着いてしまった。私が黙って車からおりると、
新しい飼い主の方が玄関から出てきてくれているのが目に入った。

挨拶をかわし、玄関先に入れていただいた。
あがってくださいと薦められたがそれは遠慮した。可愛らしいお子さん2人が
ニコニコして挨拶してくれた。
私はキャリーケースを玄関のあがったところにそっと置いた。
「やっぱりやめてこのまま帰ろう。今ならまだ間に合う。」と言う気持ちと
「これが一番良い結果なんだ、これを自分も望んだんだ」と言う気持ちが
行ったり来たりしている。
彼がネコちゃんの状態や注意したほうがいいことを簡単に説明しているのを
ボンヤリとしたアタマで聞いていた。視線をネコちゃんから離せない。
トロンとした目で私を見上げている。
私も飼い主の方と何か少し話をしたが、覚えていない。
じゃ、そろそろ・・、と彼が私を促す。私はキャリーケースの中を見た。
まだ、トロントした目で私を見上げている。
その瞬間、涙があふれてしまった。
キャリーケースの中のネコちゃんから目が離れない。
涙が止まらず、声が出せない。
「じゃぁね」とそれだけ言うつもりだったのに言葉にならない。
その代わり私は自分の人差し指と中指の先に軽くキスをしてそれをキャリーケースの上から
ネコちゃんに軽く触れるようにあてた。
ほんの少しだけネコちゃんの体温が指先から伝わる。
涙が流れていても私はぬぐうことも忘れ、「このコをこれからお願いします」と
震える声で言って、玄関を出た。

車を停めたところまで、飼い主の方が見送りに来てくださったが、涙で声がでず
頭を下げて、私たちは車に乗った。彼も無言で車を走らせた。
私たちの役目はこんなにあっさり終わってしまった。

そのあと、夜の8時くらいに飼い主の方からメールをいただいた。
病院に連れて行って健康だとわかったこと、ネコちゃんの名前が決まったこと
今はちょっと怖がっているけどこの先慣れていくだろうということ、
大切にします、本当にありがとう、と言う言葉。
そしてメールの最後に写真が2枚添えられていた。
新しいおうちでゴハンを食べている姿と、ソファの端っこで眠ってる姿だった。
ゴハンを食べている姿は、今日までずっと私が見ていた姿と一緒だった。
これからこの子は、何年もこの家族と一緒に過ごしていくんだ。
私たちと過ごした数日なんて、きっと忘れてしまうだろう。
このコの人生はこれからなんだよ、と彼が言った。
いつの間にかまた私は泣いていた。
*仔猫発見13日目 別れの時*_b0038991_041178.jpg




by reina917 | 2007-08-25 15:00